2019年10月28日~31日 地理学野外実習C 佐々木ゼミ 
長崎県島原市周辺で実施しました。


 佐々木ゼミの9名は,長崎県島原市周辺において,雲仙・普賢岳の1990年代の火山活動にともなう火砕流の発生や土石流の発生について,堆積物の調査を行いました。これに関連して災害遺構の見学も行いました。火山活動とテクトニクスとの関連で,島原地溝北縁にあたる千々石断層の調査も行いました。また,雲仙を中心とする島原半島の東西斜面や眉山において気温・湿度の定点観測,および気温と風向風速の移動観測を行い,斜面冷気流や海陸風の発生を捉えようと考えました。


   
普賢岳の東面で,正面の谷が水無川です。1991年6月3日に溶岩ドームが崩壊して火砕流が発生しました。これと前後して,斜面に積もった火山灰や火砕流堆積物が降雨の際に土石流となってたびたび流れ下り,甚大な被害となりました。この調査では火山活動前後の地形変化の状況を写真測量すべく,写真を撮影しました。  土石流被災家屋保存公園において保存された被災家屋を見学しました。ここでは1992年8月の土石流で埋められた家屋が保存されています。土石流の速度が遅かったためか,家屋は倒壊せずに土石に埋積されているようです。 
   
土石流被災家屋保存公園では,ドームのなかに3棟の家屋を保存し,展示しています。  旧大野木場小学校跡です。1991年9月15日に発生した火砕流の火砕サージがこの地に届き,校舎は焼かれてしまいました。校舎を見学し,火砕サージの怖さを体感するとともに,火砕流本体の流下方向と火砕サージ発生メカニズムについて考えました。
 
   
南島原市の深江埋蔵文化財・噴火災害資料館を見学し,学芸員のかたに火砕流発生時の状況について説明を受けました。
 
 普賢岳の中腹,おしが谷の上流部で露頭を調査しています。ここで見ているのは1993年6月に発生した火砕流の堆積物と考えられます。
   
右上と近い露頭なのに火砕流堆積物の層相がけっこう違うため,解釈に悩みました。  平成新山ネイチャーセンターの遊歩道には,噴石などから身を守るためのシェルターがつくられています。
 
   
おしが谷の上流部で大きな露頭を観察しました。これは2万年前に発生した妙見山の山崩れの堆積物と考えられます。地表付近には鬼界カルデラ起源の鬼界アカホヤテフラが見られましたが,普賢岳起源の火砕堆積物は認められませんでした。  千々石断層の調査を行いました。この断層は島原地溝の北縁をなす正断層です。露頭を探しまわりましたが,道路法面も渓床もコンクリートでふさがれ,残念ながら断層の変位を示す露頭は見つかりませんでした。 
   
 気候班は,島原から小浜まで,島原半島を東西に横断する方向に温湿度計を設置し。気温・湿度の定点観測を行いました。標高や東西斜面による気温・湿度の違いをみつけようと試みました。 気候班は,風向風速と気温の移動観測も行いましたが,その際にはレンタサイクルを活用しました。観光地だけあってレンタサイクルの調達には困りませんでしたが,一日中移動し続けるのはなかなかしんどいです。
 
   
移動観測ではこんな高さまで登ってきました。中央に見える平野は島原市街地で,写真を撮影しているのは眉山の北斜面です。平野から谷にかけて山谷風と海陸風が混じり合うのではないかと考えました。   宿泊したのは海岸にある温泉ホテルでした。調査から帰り,夜のミーティングまでのわずかな時間を使って温泉に入り,夕食をとってくつろぎました。